今回の文藝別冊は鬼才・諸星大二郎の特集本である。
購入したのは早々としておいたのだが、遅読なので合間合間にじっくり読んでこの三連休でようやく読了した(おそっ!)
諸星大二郎 異界と俗世の狭間から(文藝別冊)
こういう本である↓(河出書房サイトへ)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309977638
≫『 総特集諸星大二郎 異界と俗世の狭間から―― 』定価1,260円(本体1,200円)
ISBN 978-4-309-97763-8
まず巻頭のロングインタビューの内容が凄い。
割と淡々としていて寡黙な印象のある諸星先生からお話を引き出すインタビュアー南信長さんの流石の力量よ!
作品を熟知した聞き手の質問と構成は見事である。
その中で特に坂田ファンの人には声を大にして言いたい!
なんとこの諸星先生が南さんの質問
”「こういう絵が描けたらいいな」という理想像というか「この人の絵はいいな」みたいなのはありますか。”
という問いかけに対して、なんと坂田靖子の名前を挙げているのである!
その前の部分で「簡単な絵で、さっとうまく表現する、そういう人の絵がすごくうらやましいんですけどね」
と諸星さんはおっしゃってるので、坂田さんの絵はその理想的な感じだという流れだ。
凄い!!ここでこの文脈で坂田さんの名前が出てくるなんて!
諸星先生と坂田先生は一見絵の感じが対照的だが、表現している世界は割と近しいところにある。多分ファン層でも特に男性の方では坂田さんも諸星さんも好きだという方も多い筈だ。
諸星さんにもグリム童話を下敷きにした作品があるが、坂田さんにもあるし(『BEAST TALES 』潮出版)http://homepage2.nifty.com/~haneusagi/sakata/publish/pub_u.html
蒲 松齢の『聊斎志異』なども坂田作品にもけっこう元にされてるんじゃないかなという雰囲気がある。
坂田作品にも雨漏りで壁に出来たシミが女性の形で、一人暮らしの男がなんとなく話しかけていたらいつのまにか命を持って、という着想があったりする。いやまあこうやって書いてても話は全然違うけども。
異世界を描き、ちょっと変な生き物を描き、諸星作品は細かく(言い方は悪いがどこか泥臭く土臭く)描きこまれ怖い作品も多いけどどこかユーモラスなとこもあって・・・やっぱりどこか両者には近しい世界観があるのだ。
それでも今回諸星さんの口から坂田さんの名前が出た時は本当に驚いたし、嬉しかった!
これは一冊坂田先生にも附箋付けてお送りせねばと思っている。
そういう意味でも坂田ファンには必読のインタビューだと思うw
その他、執筆陣がまたすごい。特別寄稿の名前の豪華さよ!
下記、河出さんのサイトから引用する。
≫
●巻頭カラー8P 美麗イラストギャラリー
●諸星大二郎 2万字 ロングインタビュー
~「現代の神話」を語り続けて~
●特別寄稿
萩尾望都 山岸凉子 江口寿史 星野之宣 吾妻ひでお 高橋留美子 伊藤潤二 高橋葉介 藤田和日郎
●リスペクトインタビュー 細野晴臣
●幻の未発表マンガ
●仕事場&本棚紹介
●諸星マンガのシナリオ初公開
●アイデアノート大公開
●評論 「諸星大二郎と人類学」
1.【対談】 諸星大二郎×呉智英 「諸星大二郎の神話世界」
2.「人類学」で読み解く諸星大二郎 文・都留泰作
3.「民俗学」で読み解く諸星大二郎 文・香川雅信
4.「中国文学」で読み解く諸星大二郎 文・福嶋亮大
5.諸星作品を読み解くためのブックガイド
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マンガ家さん達の寄稿もスゴイが、何にまた驚いたって細野晴臣の名がここにあるではないですか。
伝説の「はっぴいえんど」から大好きだった細野さんが、あのYMOの細野さんが、熱心な諸星ファンとして熱く作品を語っている。またこのインタビュアーが米図の斎藤宣彦さんでその深い知識と情報で素晴らしい内容を引き出しているのである。私は細野ファンとしては古いとこを聴いてるけど浅いファンなので知らないことばっかりで、へえええ~~とただただ感心しながら読んだ。
好きなミュージシャンが語る熱い思いには感慨しきりである。
さらに大御所・呉先生とご本人の対談も素晴らしく、さらには民俗学、人類学、中国文学の権威たちの評論。
私は諸星作品は好きだし、関心をもっていくつかの作品を読んでいるが、あまり深入りしていないのは読めば必ずその元ネタまで読みたくなって大変だ~という思いがあったからだけども
実際に各分野の専門家たちの解説を読んだら、やっぱり作品を読んで元ネタ関係も読みたいぞという思いがひしひしと強くなった。
『聊斎志異』 蒲 松齢 については20年くらい前に出ていた文庫版でほぼ全巻(友人に譲ってしまったのだが全部で6冊くらいあった・検索してもどこから出ていたのかもすぐ分からないが、上下巻などで収まる量ではなかったと思う)を読んでいるのだが、民俗学関係や文化人類学などは少しかじった程度だ。
諸星作品をもっと読みたいという思いとともにそういうものへの関心がまた湧き上がってきたりして。
巻末には全作品リストや主要作品の解説もつき、ほかには仕事場の本棚写真や、アイデアノート、シナリオの公開、未公開の作品などなど、ファンが見たいレアなものがぎゅっと一冊に詰まっている。
この本は、諸星大二郎という稀有な作家の研究をしてる人間、研究まではいかなくても大好きで堪らない人間には本当に痒いところに手が届いたきめ細やかな内容なので、絶対に買って手元において保存版にした方が良いだろう~。
また、諸星さんでなくてもマンガ研究をしたい人には研究をまとめる一つの形として参考にできる一冊。
同じような編集の仕事をしてる人には嫉妬を禁じ得ない一冊だろうと思う。
なにはともあれ、面白かった~!
諸星作品をもっと読みたいぞっ!と思わせてくれたのはまず間違いないw
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