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朝井リョウ『スター』

朝日新聞に連載されていたものに加筆修正とあったが、え?ここで終わるのという感はあった。正解がない物語だからかもしれない。
読み手があとはそれぞれに考えていくしかない。
物語自体は色々と今感じてるモヤモヤしたものが言語化される部分が多くて非常に面白かった。

https://publications.asahi.com/star/

映画監督目指す二人の青年はタイプが真逆なのだが、その真逆さがうまく機能して学生時代に共同監督として撮った作品が賞を取る。
二人はその後それぞれの道で映像の仕事に就く。
一人は細部に拘るレジェンドの映画監督の撮影助手として、一人は受賞作品で縁が出来ていたボクサーのYouTube動画の撮影編集の仕事を始め…。
全く真逆に進む中でお互いがお互いにとって「隣の芝生は青い」状態。
何本も脚本を書いてはダメ出しを食らい焦っているのに、友人はYouTube動画がバズり話題になる。

この”脚本ダメ出し”の中で出てきたのが、”世界に目配りし回答を用意しすぎる”といった言葉。
ここんとこどの話題本を読んでもLGBTQや虐待諸々の社会問題が出てくる。
確かに物語に重みが出て、社会問題と向き合う感じで単なる恋愛ものや単なるミステリに終わらない深みも出て知らなかったことを知らされて、まさにそれぞれの作家が「世界に目配り」してる状態なのだな、と思った。
この作家らはほんとにそれを書かずにはおれなかったのだろうかと、ちょっと私はもや~~っと思ってたんだなと、この本のこの部分を読んだ時にはた、と納得した。
本屋大賞がらみの作品は面白く読めるしそれぞれ読後感は良いのだがちょっと食傷もするのかも、作家が世界に目配りした物語に用意された回答に。

今回の本は他にも「クオリティ低くてもバズればそれで良いのか?とはいえ伝統的なやり方に拘りすぎて見てもらえないのもどうなのか、見てもらってなんぼという映画作品で?一部の人に高評価されても一般の大半の人には知られていない・見てもらえないというのはどうなのか?」(←大意)
素人でも作品を発信出来るこの時代の表現世界、プロアマの境界線がなくなり手軽に発信できる中でプロとしてのあり方、表現世界へのアプローチの問題が延々と書かれている。
正直どうあれば良いのかは正解はないんだろう。
一瞬バズったって継続していくのは至難の業。
新しいものがぱーっと話題になっても同じ状態は続かんもん。結局は本当に発信したい中身があるかないか、だと思う。

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読書記録

ここのところの読書記録~。

東野圭吾『透明な螺旋』
ガリレオシリーズの湯川学が出てくる。東野圭吾は物語は複雑な構築なのに文章が読みやすい。
湯川が両親のもとで過ごす様子が意外性があって良い。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914244

青山美智子『赤と青とエスキース』
一枚の絵をめぐる物語のつながり。人生の大きな流れとともに。
最近電書で読んだ原田マハの本でもあったが(タイトル失念;)
読みやすいので一気読み。読後感は良かった。
https://shosetsu-maru.com/special/2022ht/akatoaoto_editor

町田そのこ『星を掬う』
本屋大賞の『52ヘルツのクジラ』に比べると最後まで本当にしんどい話が続いて、これはもうほんとに救いはどうなのとグイグイ読んだが、、、
母が子を捨て子が親を捨て。。。
捨てられた娘は成長後はDVの夫から逃げても逃げても追われ、
どうにか見つけた居場所には自分を捨てた実の母。その世話をしている女性は娘を義母に取られるように捨てられた過去を持ち、さらにそこにその当の娘がどうしようもない男に引っかかって妊娠して頼ってくる、、などなど出てくる人達それぞれが親子間の断絶の苦難の中にいて読むのが大変だったがあんまり酷いので一気読み。
東野圭吾のにも出てきたがDV男本当にどうしようもないクズが出てくる。
https://www.chuko.co.jp/tanko/2021/10/005473.html

『スモールワールズ』一穂ミチ著読了。「魔王の帰還」が一番好きかも。「花うた」切ない。
ちょっと「アルジャーノンに花束を」を思い出したり。
昔見た加害者と被害者の家族の交流を描いたドラマあったなあと思い出したり。
調べたらドラマは「それでも、生きていく」だった。瑛太と満島ひかり。重たいドラマだったなあ。
加害者もどこに引っ越しても必ず無関係の他人があいつら人殺しの家族だと拡散するという現実に苦しめられていた。
「花うた」は切ないけど読後が良い物語でした。
https://smallworlds.kodansha.co.jp/


『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』読了。1イギリスの教育システムに驚く。多様な選択肢。
人生どう生きていきたいかを割と早い段階で考え何が必要かをよく考えて受ける授業を選択していかねばならない。具体的で実践的な課題が出る。イギリス凄い。昔の日本の教育しか知らないので比較すると全然良い。あと、凄く教養部分も大事にしている。今の日本の教育はどうなのじゃろ。知らんから日本はダメともなんとも言う立場にないが。
教育のことはともかく政治的には日本同様、自助自助という政府みたいなもので別にイギリスの方がいいとは思えない現状が描かれている。
https://www.shinchosha.co.jp/book/352682/

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