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それでもやっぱり恋をする~『どうしても触れたくない』ヨネダコウ

現在紙本・電書版ともに発行あり。ミリオンコミックス CRAFT SERIES 26) コミック 2008年9月1日
*感想、ネタバレありますのでご注意ください*

初版がもう16年も前なのだった。この年に生まれた子供さん方が高校生。時の経つのは速い。
最初に読んだ時、ナイーブな主人公・嶋くんがもう堪らなく可愛くて、どうにかしてあげたい気持ちになった。ということで、作中の上司・外川もノンケなのにこの可愛さに参ってすぐ恋人関係に。
紹介文を書こうと思って久々に読んだら私の記憶よりもかなり早くさくっと寝ていた。外川が非常に柔らか頭なのだった。

さくっと関係が進んだのだが、実は外川の過去は重かった。
父親が交通事故で死んだあと、ノイローゼになった母親が後追い心中を図った。弟が死に、生き残った母親は服役後、結局自殺した。
残された外川は祖父母に育てられた。
目の前で燃えて崩れていく夜中の自宅の記憶の中に静かに雪が降る。
仕事も出来、頼れる上司としてムードメーカーでもある明るい性格と思えた外川の過去を何気ない調子で語り聞かされた嶋くん。
その上で自分には家族に憧れがあると言われたら、この関係を続けていてはいけないと思ってしまう。それはもう自然な流れ。

どんどんと嶋くんへの愛しさが募る外川に対して嶋くんは距離を置きたいと思いつつ、出来ない。そこに外川の京都への転勤の話が来る。
その機に覚悟を決めて別れを切り出す嶋くん。自分がいつか重荷になることが怖いという彼の覚悟を翻すことが出来ない。自らの重い過去が相手を苦しめる。そのことを突き付けられるとどうしようもないのだった。
この別れのシーンの切なさには涙しかない。

二人の関係をつなぎ直したのは外川の仕事の後継をした小野田だった。
自分の気持ちに正直になる嶋くんの涙と頑張りの場面には読者として嬉し涙しかなかった。よかった、間に合った、本当によかった、という気持ち。

気が付くと映画化もされていた。
映画はどうだったのかな、ちょっと観てないけども(すみません。)
スピンオフとして小野田の恋愛譚『それでもやさしい恋をする』もあり、こちらもとても良い。

<24のセンチメント>17

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心の声が聴きたい~『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』豊田悠

いまさら紹介するまでもなく大ヒット作品、通称チェリまほ。
私が読んだのはSNSで無償で読めるとかでバンバン広告が流れてきた時期があったり、kindleアンリミテッドで読めた時期があったせいだった気がする。紹介されていたエレベータでのカットが面白くてつい読み始めたら、面白いのなんの。
申し訳ないことを自白すると、絵はあまり好みではなかった(すみません)でも、陰キャだと自認する主人公・安達の心理描写の細やかさと、イケメンで仕事も出来る黒沢が安達に対して臆病でドキドキ、ピュアなのに、妄想の面白さに受けまくった。仕事描写の細やかさも悩みの具体的な感じも好みだった。

さて、タイトルのように30歳まで童貞だった安達は30の誕生日の朝、急に周囲の人間の心の声が聴こえてくるようになってしまった。魔法使いになったのである。ただ、身体に触れている間だけという限定ではある。
わが身に起きた不思議現象、あまりのことに戸惑いつつも、満員電車を避け早めに出る、支払いを電子にするなど工夫し割とあっさりそのことに慣れていく。
が、ちょっと人が混雑した職場のビルのエレベータで密着した黒沢の心の声を聴き、彼のまさかの自分への恋心を知ってしまう。
そこからの展開がまた一段と面白い。
先輩社員に頼られて断り切れず仕事を代わり遅くまで残業する安達に差し入れのコーヒーを渡したり仕事を手伝う黒沢。
最終電車を逃した安達を部屋に誘うのだが、彼の部屋にはなぜか安達にぴったりサイズでよく似合うパジャマが買ってあったり。
黒沢の妄想の中を垣間見てしまって怖気づくのだが、美味しい朝ごはんを食べさせて貰ったり。
女子社員にモテモテで仕事も出来る黒沢の、安達に対してのみっともないほどにジタバタする恋のアプローチに笑いながらも凄く応援したくなる。

このところ酷い悲劇があって、マンガ原作のドラマ化に逆風が吹きすさぶっているが、少なくともちぇりまほに関して言えば、ドラマ化がまた良かった。
主役二人がぴったりで、真摯に役を体現してくれた。ほかの配役も素晴らしかったし、脚本も良かった。私はアマプラでドラマを続けて見て、あまりの出来の良さについ繰り返し見てしまった。そのくらい世界観の再現がよかった。昨今「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」など同性愛についてのドラマがとても当たっているのもあるが、ごく自然に受け入れられるドラマになっている。
原作者さんのコメントも読んだが、ドラマにとても喜んでおられるようだった。だから、全部を十把一絡げにして否定するものでもない。
結局は個々の問題である。

悲劇が起きたくだんのドラマについては、私はドラマも見てないし原作も知らない。だから何か言うべきことをまったくもたない。
亡くなった作家さんのご冥福をひたすらに祈り、これ以上誰か個人が責められることがありませんように、と願う。
そして、上手くいったメディアミックスもいっぱいあるよね、と思うので、成功例を参考に何か悪かったことがある組織やシステムが自省し、二度と同じような悲劇が起きませんように。

<24のセンチメント>16

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異種恋愛譚~『うしみつどきどき古書店譚』tacocasi著

*下記 noteに挙げた分をこちらにも挙げておきます~。
昔に某サイトで企画で挙げていた<24のセンチメント>の続き。せめて、せめて今度こそ24個挙げ切る野望。
すごく大好きな作家さんなのですが、詳細は不明なんですけど出版社を移られたようです。
今回新装版で電書も出直して良かったな!と思っています。

≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫≫
祝!!新装版 電書発行!!
新装版 うしみつどきどき古書店譚 (光文社 BL COMICS / Vinyl)2024年2月23日感想、ネタバレありますのでご承知おきください。)

だいぶ前にサイトで企画して挙げていたBLブックガイドを挙げ直していたんだけど、手持ちの分が終わった。24個挙げるのを目標にしていたのになんと14個。我ながらなんという根性ナシであることよ。
で、同じ企画で再開するなら一番目はtacocasiさんのこの作品にしよう!と自分の中で決めていた。

 私がこの方の作品を最初に読んだのはそもそも電書版だった。Twitterで流れてきた表紙絵が可愛いのでふらっと前知識もナシに購入して読んだら好きすぎて、紙本も買った。他の作品も電書で買った。なんだか現在は別の出版社から電書版の新装版が出ているので契約を変更されたのだろう。詳細は私には不明だけども。今チェックするとこの作品は紙本のみとなっている。事情が色々あるんだろうな~と慮りつつ、全力で応援したい。
補記*と言ってる間に新装版が電書にて発行された!!良かった~~応援しますとも!!(2024年2月21日)

ともかく、絵が好みなのだ。シンプルな線でどこか緩い色香があってそこがいい。
物語はそんなに裕福ではない大学院生・小宮君が下宿先に戻るところから始まる。彼の下宿先は古い民家の二四書房の2階の部屋。
店主・西陽蔵は一見強面だったが、小宮君の好みにはドンピシャだった。
時代も変わったな~とここで思うのが、小宮君はまったく自分の性癖に悩んでいない。自分の好みの店主と帰り道で買ってきた豆もちを一緒に食べて、甘い物好きでぱくぱく食べる陽蔵さんの顔を眺めて嬉しい。
下宿代は月1万。古民家といってもこの破格の条件が、要請があったら店番手伝ってくれ、だった。
大学院生の小宮君は要請に従って店番を引き受けるが、PCで原稿を書いたり調べ物をしたりしながら出来るので、全然Win-Winなのだった。

ある日いつもにまして不思議な二人連れのお客様が陽蔵さんの副業関係で訪問する。どこかクラシカルな服装(大正時代の洋装みたいな)の美人女性と制服の女の子。通した後で大きな地震が起き、直後悲鳴が聞こえて駆けつけると、なんと陽蔵さんが何か液体を被ってしまってしゅるしゅる~~っと縮んでしまう。若返りの薬を浴びて少年の姿になってしまったのだった。
ショタの人にも堪らん展開で、少年の陽蔵さんも可愛い。

陽蔵さんの副業というのがここで明かされるが、神様相手に質屋をやっているのだった。神様の作るものを仕入れて販売したり、逆に人間界の依頼を神様に持って行ったりする。この時点では小宮君は知らないが、実は陽蔵さんも中身は西家の屋敷神なのだった。

ファンタジックな展開なのだけど、すごく地に足がついた生活ぶり。
信仰が薄れつつある現代において神様たちが自分でお金稼いで神社の修繕費捻出したりする。信仰が薄れると実体化の力が弱まったりするという話もある。縁切りの神様が縁結びも兼ねているとか、元々は妖怪だったが縁切りが人間の益になったので奉られて神化したとか。なるほどあるある、と頷く。
元々の西家の子孫である本当の店主・西が友人の裏切りによって生きる気力を失い自死を図ってしまったのが、祖霊が神化した陽蔵さんが中に入ることになった原因だった。

何代も子孫を見守り家を見守ってきた屋敷神ニシ様。それに恋した小宮君は、諸々の事柄が判明してもこの恋は変わらないという。
神様と人間の恋。
それもすごく素直。何も迷いがない。
小宮君のものすごく自然体なキャラと、不器用でどこか抜けてる屋敷神ニシ様のキャラに読んでいて癒される。エピに出てくる各神々も、偉いのに人型取る時に変なTシャツ着てラフスタイルだったりする感覚が新しい。

なんだかんだあって、落ち着くところに落ち着いた二人がいちゃいちゃしながら古民家二四書房で暮らしてる様がとても良い。なごむ。疲れているときには特に染みる。
何回も繰り返し読んでしまう一冊なのだ。

(補足*昔、サイトで公開していたBL作品紹介文の既出原稿再掲が終わったのでここから新しい紹介になります。<24のセンチメント>15
初版はNUUDE COMICS 東京漫画社発行 2021年8月15日)

新装版 弦巻先生の作家生活 (光文社 BL COMICS / Vinyl) Kindle版 2024年1月26日発行
新装版 お守りくん (光文社 BL COMICS / Vinyl)Kindle版 2024年1月26日発行

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