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心の声が聴きたい~『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』豊田悠

いまさら紹介するまでもなく大ヒット作品、通称チェリまほ。
私が読んだのはSNSで無償で読めるとかでバンバン広告が流れてきた時期があったり、kindleアンリミテッドで読めた時期があったせいだった気がする。紹介されていたエレベータでのカットが面白くてつい読み始めたら、面白いのなんの。
申し訳ないことを自白すると、絵はあまり好みではなかった(すみません)でも、陰キャだと自認する主人公・安達の心理描写の細やかさと、イケメンで仕事も出来る黒沢が安達に対して臆病でドキドキ、ピュアなのに、妄想の面白さに受けまくった。仕事描写の細やかさも悩みの具体的な感じも好みだった。

さて、タイトルのように30歳まで童貞だった安達は30の誕生日の朝、急に周囲の人間の心の声が聴こえてくるようになってしまった。魔法使いになったのである。ただ、身体に触れている間だけという限定ではある。
わが身に起きた不思議現象、あまりのことに戸惑いつつも、満員電車を避け早めに出る、支払いを電子にするなど工夫し割とあっさりそのことに慣れていく。
が、ちょっと人が混雑した職場のビルのエレベータで密着した黒沢の心の声を聴き、彼のまさかの自分への恋心を知ってしまう。
そこからの展開がまた一段と面白い。
先輩社員に頼られて断り切れず仕事を代わり遅くまで残業する安達に差し入れのコーヒーを渡したり仕事を手伝う黒沢。
最終電車を逃した安達を部屋に誘うのだが、彼の部屋にはなぜか安達にぴったりサイズでよく似合うパジャマが買ってあったり。
黒沢の妄想の中を垣間見てしまって怖気づくのだが、美味しい朝ごはんを食べさせて貰ったり。
女子社員にモテモテで仕事も出来る黒沢の、安達に対してのみっともないほどにジタバタする恋のアプローチに笑いながらも凄く応援したくなる。

このところ酷い悲劇があって、マンガ原作のドラマ化に逆風が吹きすさぶっているが、少なくともちぇりまほに関して言えば、ドラマ化がまた良かった。
主役二人がぴったりで、真摯に役を体現してくれた。ほかの配役も素晴らしかったし、脚本も良かった。私はアマプラでドラマを続けて見て、あまりの出来の良さについ繰り返し見てしまった。そのくらい世界観の再現がよかった。昨今「おっさんずラブ」や「きのう何食べた?」など同性愛についてのドラマがとても当たっているのもあるが、ごく自然に受け入れられるドラマになっている。
原作者さんのコメントも読んだが、ドラマにとても喜んでおられるようだった。だから、全部を十把一絡げにして否定するものでもない。
結局は個々の問題である。

悲劇が起きたくだんのドラマについては、私はドラマも見てないし原作も知らない。だから何か言うべきことをまったくもたない。
亡くなった作家さんのご冥福をひたすらに祈り、これ以上誰か個人が責められることがありませんように、と願う。
そして、上手くいったメディアミックスもいっぱいあるよね、と思うので、成功例を参考に何か悪かったことがある組織やシステムが自省し、二度と同じような悲劇が起きませんように。

<24のセンチメント>16

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